【検証】エミン・ユルマズ「日経平均30万円・投資4大メガテーマ」は本当か──新冷戦と防衛・宇宙株をデータで確かめる
不動産投資メディア「楽待」が2026年6月15日に公開した対談動画の後編は、エコノミストのエミン・ユルマズ氏と、安全保障の専門家・小泉悠氏(東京大学)が「新冷戦の時代に日本はどう動き、どこに投資のテーマがあるか」を語り合う内容です。前編のSpaceX上場・宇宙ビジネスの話を受け、後編は**「米中新冷戦は日本にとって追い風」「長期の投資4大メガテーマ」「日経平均30万円シナリオ」「防衛・宇宙株」**に軸足が移ります。本記事では、地政学の大きな物語として語られたこれらの主張のうち、数字で確かめられる部分を防衛費・株価・各社予想といった一次情報と突き合わせて検証します。結論を先に言えば、引用された事実の骨格は概ね正確でした。ただし株価の「倍率」と「日経30万円」の時期感は、勢いに乗って盛られている部分があります。
動画の評価: 「米中新冷戦で米国が日本に生産(船・ミサイル・ドローン・宇宙)を頼る→日本に追い風」という見立ては、防衛費が初の9兆円超、重工3社の株価急騰、トルコ製ドローンの導入検討といった足元の事実とよく整合する。一方で「重工株が3年で15〜20倍」「大和は35万円」といった具体数字は実際よりやや大きく、長期シナリオと現実の数字が混ざって語られる点は割り引きたい。
視聴をすすめる人: 防衛・エネルギー・宇宙という"安全保障プレミアム"の大きな絵を掴みたい人。 すすめない人: 「日経30万円」を近い将来の確定路線として売買の根拠にしたい人。
レビュー対象の動画

- 動画タイトル
- 【日経平均は止まらない】「日本に訪れる追い風」新冷戦が生み出す大国の勢力転換/AI時代の投資4大メガテーマ/小泉悠が語る防衛最前線と裏付け
- 出演
- エミン・ユルマズ氏(エコノミスト)/小泉悠氏(東京大学・安全保障)
- 公開日
- 2026年6月15日(楽待・対談の後編)
- 主なテーマ
- 新冷戦と多極化/投資4大メガテーマ/日経平均30万円/防衛・宇宙株
- こんな動画
SpaceX上場を入口にした前編に続く後編。地政学(新冷戦・多極化)を投資テーマへ落とし込み、最後は防衛・宇宙関連の物色に着地する構成です。
動画の内容(チャプター別1分要約)
約39分の対談を、論点ごとに1〜2文で要約します。
台本崩壊──大舌戦の後半戦
台本の想定を超えて議論が白熱した、という前置き。前編で扱ったSpaceXと安全保障の話を引き継ぐ。
「いずれ日本がロシアを救済する」
ロシアが弱体化しすぎると、極東の資源(とりわけAIに不可欠な水)を狙って中国が動く。中国の突出を防ぐため、日本はいずれロシアを支える側に回るリスクシナリオもある、という逆説。
日本が持つべき独自の防衛力
米国の一極支配は後退し、世界は多極化する。日本は他国に頼り切らず自力で守れる軍事力を、しかもドローン・AI・宇宙という新しい形で持つべき、という主張。
投資の4大メガテーマ
エミン氏が一貫して掲げる向こう20〜30年のテーマは、①通信IT・AI、②ヘルスケア、③エネルギー(原発再稼働を含む)、④防衛(食・水・サイバーまで含む広義の安全保障)。
日経平均30万円シナリオ
新冷戦で米国が日本に「物作り」を頼る構図が日本復活の根拠。10年前から掲げる2050年・日経30万円に、いまや野村・大和の長期予想も近づいてきた、と語る。
トルコに学ぶ外交バーゲニング
強みを「高く買わせる」交渉力が日本には足りない。大国を怒らせまいとせず、関西商人やトルコのバザール商人のように図太く駆け引きすべき、という外交論。
海洋国家・多極化時代の日本
歴史はランドパワーとシーパワーの衝突。海洋国家である日本は陣営を一つに固定せず、ヘッジファンドのように複数の関係を張って立ち回るべき、という構え。
宇宙株と防衛政策の課題
防衛費は初の9兆円超。グロース市場では宇宙関連が存在感を増す。一方で弾薬不足・施設の地下化など、レガシーな防衛の積み残しも大きい(小泉氏)。
エミン氏の「投資4大メガテーマ」とは
動画の投資パートの軸は、エミン氏が著書や各所で繰り返し述べてきた4つの長期テーマです。
通信インフラ、AI、ソフトウェアまで。デジタルの土台
長寿化で「健康に長く現役」を支える。遺伝子治療やAI創薬
AIは電力を食う。原発再稼働や次世代電源が再注目される
兵器だけでなく食・水・サイバーまで含む広義の安全保障
ポイントは、4つ目の「防衛」を戦車や戦闘機に限定せず、**食料・水・サイバーまで含む"広義の安全保障"**と捉えている点です。食品会社や水産会社も一種の防衛、という見立ては、資産防衛のテーマと地続きで読めます。
【独自検証】動画の主張は本当か?データと突き合わせた
動画内の数字で確かめられる主張を、一次情報・報道で検証しました。
| 動画の主張 | 検証結果 | 判定 |
|---|---|---|
| 日本の防衛費が初めて9兆円を突破した | 2026年度当初予算の防衛関係費は9兆353億円で、初の9兆円台。当初予算ベースで12年連続の過去最大(報道)。 | ○ 整合 |
| 重工3社(三菱重工・IHI・川崎重工)が3年で15〜20倍になった | 大幅高は事実だが倍率は過大。直近約3年半の時価総額の伸びは三菱重工が約9倍、IHIが約6倍、川崎重工が約4倍(東洋経済)。同期間の日経平均は約1.7倍。 | △ 誇張ぎみ |
| 2022年の著書『エブリシング・バブルの崩壊』で防衛株を割安と指摘し、重工3社を推した | 同書は2022年3月刊(集英社)。低PBR・高配当の機械・防衛関連として三菱重工(7011)・川崎重工(7012)・IHI(7013)を挙げてきたのは各種インタビューと整合。 | ○ 整合 |
| 日経30万円を10年前から主張。いまや野村24万・大和35万と各社が追随 | 野村アセットは「2040年に24万円」の試算を公表。大和は顧客向け文書で「30万円」を提示と報じられ、35万円はやや過大。10年前からの主張・時期(2050年)は本人談かつ予想段階。 | △ 予想・数字ずれ |
| 防衛省がトルコ製ドローン(バイラクタルTB2)を試験的に導入する | 中谷防衛相が2025年8月にTB2の導入検討を表明し、試験評価を実施中(年度内完了予定)。導入は検討・試験段階で、決定ではない。 | ○ おおむね整合 |
| ジョージ・フリードマンが著書で2050年の日本の軍事復活・宇宙覇権を予測 | 『100年予測』(ハヤカワ)に、2050年に日本とトルコが台頭し米・ポーランドと衝突、宇宙の支配・宇宙太陽光発電に言及があり整合。なお動画では一時「マイケル・フリードマン」と著者名を言い間違えている(正しくはジョージ)。 | ○ 整合 |
| グロース市場では宇宙関連株が存在感を増している(アストロスケール等) | アストロスケールHD(186A)・Synspective(290A)はいずれも東証グロース上場。宇宙関連は急騰局面がある一方、アストロスケールは6/15に約-21%など値動きは荒い。 | ○ おおむね整合 |
判定の凡例: ○ データと整合 / △ シナリオ・観測段階/数字ずれ / ✕ データと矛盾
数字で見る「日本に追い風」論の足元
2026年度の防衛関係費(当初予算)。初の9兆円超
三菱重工の時価総額の伸び(直近約3年半)。3社で最大
野村アセットが試算する2040年の日経平均(一例)
エミン氏が掲げる2050年シナリオ。あくまで長期予想
※防衛費は2026年度当初予算案、時価総額の倍率・各社予想は各報道に基づく数値です。予想値は前提が変われば変動します。
あわせて押さえたい用語
この動画に関連する銘柄・指標
| ティッカー | 銘柄 | 動画内の文脈と注目ポイント |
|---|---|---|
7011 | 三菱重工業 | エミン氏が推した重工3社の筆頭。防衛費拡大で時価総額が約9倍に |
7013 | IHI | 同3社の一角。時価総額は約6倍。航空エンジン・防衛 |
7012 | 川崎重工業 | 同。CH-47など大口受注で受注高に占める防衛比率が上昇 |
186A | アストロスケールHD | 宇宙デブリ除去。グロースの宇宙株代表格だが値動きは荒い |
290A | Synspective | 小型SAR衛星。グロース上場の宇宙スタートアップ |
※本表は動画内での言及・テーマの整理であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
編集部の見解:同意する点・しない点
✓ 同意する点
- 「米国が造船・ミサイル・ドローン・宇宙の生産を同盟国に頼る→日本に発注が向かう」という構図は、防衛費9兆円超やトルコ製ドローン導入検討など足元の事実と整合する
- 防衛を兵器に限らず「食・水・エネルギー・サイバー」まで広げて捉える視点は、資産防衛のテーマと地続きで実用的
✗ 異論・補足
- 「重工株は3年で15〜20倍」は過大。実際は時価総額で4〜9倍で、すでに大きく上昇した後である点(=割安局面ではない)に注意
- 「日経30万円」は2050年を見据えた超長期シナリオ。野村24万・大和30万も同様の長期試算で、近い将来の確定路線ではない
当メディアの視点: この対談から持ち帰るべきは「だから防衛株を買え」ではなく、3つの"確かめる習慣"です。①「日本に追い風」という大きな物語は、防衛費・受注残・政策(ドローン導入検討など)という検証できる事実に分解して追う。②勢いのある語りで出てくる「○倍」「○万円」は、倍率の基準(株価か時価総額か)と時期(何年の話か)を必ず確認する──実際、重工株の倍率も日経30万円の時期もここで補正が要りました。③長期テーマ(防衛・エネルギー・宇宙)が正しいことと、いまの株価が割安かは別問題。テーマの正しさを「今すぐの買い」に直結させない、という線引きが大切です。
この動画をおすすめできる人
- 新冷戦・多極化という地政学の流れを、投資テーマ(防衛・エネルギー・宇宙)の大きな絵として掴みたい人
- エミン氏の「4大メガテーマ」を出典の言葉で押さえたい人
おすすめしない人
- 「日経30万円」や「重工15倍」を、近い将来の確定値や売買の根拠にしたい人
- すでに大きく上昇した防衛株に、割安だと思って後追いで乗りたい人
よくある質問
エミンさんの「投資4大メガテーマ」とは何ですか?
①通信IT・AI、②ヘルスケア、③エネルギー、④防衛の4つです。向こう20〜30年の長期テーマとして一貫して挙げているもので、特に④の防衛は兵器に限らず食料・水・サイバーまで含む広義の安全保障として捉えています。
「重工株が3年で15〜20倍」は本当ですか?
倍率としては過大です。大きく上昇したのは事実ですが、直近約3年半の時価総額の伸びは三菱重工が約9倍、IHIが約6倍、川崎重工が約4倍です(同期間の日経平均は約1.7倍)。すでに上昇した後である点に注意が必要です。
「日経平均30万円」はいつの話ですか?
エミン氏が掲げるのは2050年を見据えた超長期のシナリオで、近い将来の予想ではありません。野村アセットは2040年に24万円、大和は顧客向け文書で30万円という長期試算を示していますが、いずれも前提が変われば動く予想値です。
日本はトルコ製ドローンを導入するのですか?
2025年8月に中谷防衛相が攻撃型ドローン「バイラクタルTB2」の導入検討を表明し、試験・評価を進めている段階です。正式な導入決定ではなく、無人機を活用した沿岸防衛構想の一環として検討されています。
出典・参照データ
- レビュー対象動画:【日経平均は止まらない】"日本に訪れる追い風"新冷戦が生み出す大国の勢力転換/AI時代の投資4大メガテーマ(楽待 RAKUMACHI・YouTube) 2026/6/15
- 防衛費9兆円超:防衛費、過去最大9兆円 無人機取得、処遇改善を加速(時事ドットコム) / 来年度予算案の防衛関係費は初の9兆円台に(東洋経済オンライン/ブルームバーグ)
- 重工3社の時価総額:膨張する防衛費の恩恵で株価沸騰が止まらない三菱重・川崎重・IHIの重工3社(東洋経済オンライン)
- エミン氏の著書・銘柄観:エブリシング・バブルの崩壊(エミン・ユルマズ/集英社) / 市場急変の今「日本株のバリュー銘柄」に注目する理由(マネクリ・マネックス証券)
- 日経平均の長期予想:2040年の日経平均株価は「24万円」に到達する可能性(野村ウェルスタイル) / 日経平均株価が「30万円」に!? 大和証券"お客様限定文書"(デイリー新潮)
- トルコ製ドローン:中谷防衛相 トルコ製ドローン「バイラクタルTB2」の導入検討を表明(JC-NET) / 自衛隊、トルコ製ドローンの採用検討(日本経済新聞)
- ジョージ・フリードマン:100年予測(ジョージ・フリードマン/ハヤカワ文庫)
- 宇宙関連株:アストロスケールホールディングス(186A) 東証グロース 株価(松井証券)
※ 動画の発言の引用・要約は自動字幕(文字起こし)に基づきます。本記事は動画の主張を公開情報で検証したものであり、将来の相場・株価を保証するものではありません。
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「事実(開示・報道)と値動きを分けて見る」を編集方針に、初心者向けの資産防衛情報を整理しています。 本記事は投資助言ではありません。